タイ・カンボジア国境検問所の開門時間が短縮、日系企業のビジネスに影響
(カンボジア、タイ)
プノンペン発
2025年06月12日
タイ・カンボジア国境地帯で発生した紛争(2025年6月11日記事参照)に伴い、両国間の複数の国境で、検問所の開門時間の短縮が発表された。カンボジアにとって主要な貿易相手国でもあるタイとの国境物流への影響が懸念される。
カンボジア関税消費税総局(GDCE)によると、2025年1~4月のカンボジアによるタイの貿易額は、輸入11億6,000万ドル、輸出3億3,000万ドルだった。このうち、国境検問所を経由したカンボジアの輸入は3億7,000万ドル(タイからの輸入全体に占める割合は31.9%)、輸出は9,800万ドル(タイへの輸出全体に占める割合は29.9%)で、貿易額の約3割は国境を経由して行われている(「クメール・タイムズ」6月5日)。
貿易額が最も大きい国境検問所のポイペト(タイ側はアランヤプラテート)では、従来、午前6時から午後10時まで開門していたが、今回の措置で開門時間が半分ほどに短縮された。なお、開門時間はカンボジア側とタイ側で異なるため、注意が必要だ。
- カンボジア側のポイペト国境の開門時間:午前9時から午後4時までに短縮
- タイ側のアランヤプラテート国境の開門時間:午前8時から午後4時までに短縮
そのほか、タプラヤ(カンボジア側の開門:午前9時から正午まで、タイ側の開門:午前8時から正午まで)、チョン・チョム(カンボジア側の開門:午前9時から午後3時まで、タイ側の開門:午前8時から午後3時まで、いずれも月・水・金)などの国境検問所も、カンボジア側とタイ側で開門時間が異なり、留意する必要がある。
ポイペトには現在、9社(注)の日系企業が進出しており、その多くがタイとカンボジアの賃金格差やカンボジアの豊富な若い労働力を生かしてタイとの分業を行う「タイ・プラス・ワン」型のビジネスモデルのため、タイ拠点との物流が滞ると大きな影響がある。ポイペトで工業団地を経営するロイヤルグループ・ポイペト経済特区の上松裕士最高経営責任者(CEO)によると、2024年の同工業団地からタイへの輸出額は年間約700万ドルで、「今回の措置により、午後4時閉門に合わせて工場から出荷しなくてはならないため、生産量の減少が見込まれる。仮に時間内に国境を越えられない場合、物流会社への夜間滞在費用などの追加料金も発生する。時間短縮の措置が長引くと、タイ側顧客のポイペト出張取りやめなど、人の往来にも影響が出てくるだろう」とコメントした(ジェトロのヒアリング、6月10日)。
(注)ポイペト進出日系企業は、日本発条(自動車シート部品)、Steel Hub LTD(建設用鋼管)、ニデックダイキャスティング(電子部品)、コイワボンド(自動車シート部品)、テクノパークポイペト(賃貸工場サービス)、エクセディ(自動車部品)、サンコーエレクトロニクス(ワイヤーハーネス)、行田アジア(カンボジア、ワイヤーハーネス)、スミトロニクス(電子コンポーネント)
(若林康平)
(カンボジア、タイ)
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